屈伸 開発者の声
第四回「宮本勝則(赤)」さん
屈伸



★自己紹介
こんにちわ、(赤)です。
現在、コンパイルで新企画の検討・研究をしています。

ゲーム業界は、もともと会社の新陳代謝が激しいので、今や自分もコンパイルでは古株社員です。 でも、まだまだ若いです。年はハタチです ( 1ケタ目切り捨て )。 好きなゲームは、強制スクロールタイプのSTG ( でも最近は衰え気味 ) と某剣術対戦格闘ゲーム。 クリアまでのプレイ時間が長いゲームがおおむね苦手。

最近、自分の中でヒットしているのは、日本で生まれた打撃系総合格闘技のK1。 派手なKOシーンなど内容の豪快さが良くとりざたされますが、それだけでなく、戦いの背景もすばらしいのです。 各団体、各国、各格闘技、それぞれのチャンピオン ( いいかえれば、後ろにそれだけの大きなものを背負った代表 ) 同士がしのぎを削る光景は、とても感銘を与えてくれます。 年末のグランプリ決勝が今からとても楽しみです。

あと、社内の熱い野郎達の影響もあって、再ヒット中なのが快傑Z○ット。
★Disc Station ( 以下DS ) との関わり
恐らく、自分はほとんどのユーザーの方に馴染みがないと思います。 関わっていたのは、大分過去の号だし、仕事内容もDSの裏方でしたから ( さらにペンネームまで変わってますね)。

直接DSのゲームを作ったこともないに等しいのですが、DS自体とのつきあいはかなり長く、DS3号〜13号くらいまで、後輩に仕事を引き継ぐまで直接関わっていました。 仕事の内容は、主に各ゲームやDS全体のマスターアップのサポート、全体の進行管理、東京の本誌編集部との連絡など、まあ一言で言えば、北野不凡盤監のサポートでした。
★DSの思い出
DSは、DS課という部署で作られていました。 DS課は、DS以外にもパソコンの一本物の作成も手がけていました。 やがて、会社全体のみならず、DS自体の売れ行きも伸び、課の人員も増え、部に昇格していきました。 その間、FD3枚で始まったDSも、
・ HD対応
・ CD-ROM化
・ Win95化
・ コンビニ流通の開拓
・ 韓国版の発売
などなど、細かいことを数え上げればキリがないくらい、いろいろありました。

自分は途中から、だんだん関わりが薄くなっていったのですが、その後もDSは、北野盤監を中心にどんどん発展していき、今は、くぼっち盤監を中心についに20号に到達しています。 これからも、会社の柱のひとつとしてDSには、がんばって欲しいものです。

DSでの思い出は、とてもいろいろあります。 社員でも割と古い人しか知らないような過去のエピソードで、公開しても問題なさそうなものを、ほんの一部だけ紹介しましょう。
●深夜の開発室( DS1〜2号収録 DEVIL FORCE (以下DF) )
98年はアフターデビルフォースが発売されましたが、ここで挙げているDFは初代DFのことで、DS1号に前編、2号に後編が掲載されました。
ちょうど、自分が入社したころ、アップ前の修羅場で、プログラマーのまうちゅうさんが毎日深夜までプログラムを組み、デザイナーの單気筒さんは徹夜で絵を描いたりしてました。
で、さすがにぶっとおしはきついんで、單気筒さんは息抜きにテストプレイルームで、基板の「ワル○ューレの伝○」や「アサ○ト」をプレイしていたり・・・ ( 俺は見学者 )
.
●人口知能バグ
自分がまだ新人のころの話。
ある先輩プログラマーは、厳しい他人のツッコミ ( 例えば仕様のミス ) や、テストプレイでの思わぬバグの報告に対して「え」と言って、動きがカタまることが特徴的でした。
ある日、その方がメインプログラムを担当しているRPGのテストプレイで、ショップ処理関連のバグが出ました。 どうやら、所持金が特定の数値を越えると、所持金額欄に不正なものが表示されるらしい。
問題は、そこに表示されている内容でした。そこには、こう表示されていました。
「え」
.
●新幹線事件 ( DS5号収録 大魔導戦略物語 )
締め切りギリギリ、徹夜明けでついに大魔導戦略物語がマスターアップ。
で、DSのマスターフロッピーディスクを直接スタッフの沢渡寿三郎くんが持って朝イチの新幹線で東京へ・・・のはずが !
なんと、沢渡くんが駅に向かった直後に新たなバグ発覚。盤監は絶叫して駅に向かって猛然とダッシュ!!
これは、DS6号本誌にも新聞記事形式で詳しく載ってますが、やらせじゃなくて、実話です。
いや、すごかった。
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●7人の侍 ( DS7号収録 VERSUS )
VERSUSは、開発期間があまりにも短すぎたため、マスターアップが守れるかどうか、の瀬戸際に立たされました。
そんなとき、7人のサポートメンバーが組織され、プロジェクトの窮地を救いました。
彼らは、「7人の侍」と呼ばれ、後に起こるDS最大の危機、DS9号「魔導四五六」のプロジェクト終盤にも現れたとか・・・
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●焼き肉屋にて ( DS7号収録 Wind's Seed )
いろいろと新しい試みに挑戦し難航した「Wind's Seed」もようやく最終版のテストが終わり、スタッフも晴れて解放され、それぞれ帰路につきました。
自分と企画兼プロジェクトリーダーであるガッツ中松さんは、会社帰りにアップを祝して、冷たいビールと焼き肉をたらふく食いました。

そこでの会話。
...... 中松 : 「 そういえば帰るとき、まだ宮崎 ( カクテル宮崎 ) くんが遊んどったなあ。」
(赤) : 「 彼はマスターアップを覆すのがむちゃくちゃ得意なんで、バグを見つけてたりして。」
中松 : 「 それで、俺等がゲーセン行ったら、待ちかまえとって、バグが出た、とか報告されたらかなわんな(笑)。」
(赤) : 「 まあ、ここまでやったんだから、もう致命的なバグは出ないでしょう(笑)。」

焼き肉を食い終わった後、我々はたいそう上機嫌で近場のゲームセンターに立ち寄りました。 そこには、先ほど話題に上った彼がいました。

......「すいません!! バグが出ました!!! 致命的なやつです!!!!」
.
●このバグは・・・ ( DS9号収録 森のクリスマス )
当時、プログラマーのカクテル宮崎くん ( 以下宮崎 ) は、Win3.1用インストーラ ( 設計 & プログラム ) と、並行して「森のクリスマス」のプログラムも担当していました。
どちらも9号収録予定で、残り期間も少なく、結構とんでもない状況でした。
終盤は、連日徹夜に近い作業が続いていて、端から見ても彼の疲労は相当のものだと伺えました。
精神力とゲーム開発に対する情熱で何とか持ちこたえているという感じです。

そんな厳しい中、新たなバグが発生。
出ているバグについて、原因の予測が立つか宮崎くんに説明を求めたところ、
「このバグは・・・」と説明しかけて、彼はピクリとも動かなくなりました。

まさか、ショックで燃え尽きてしまったのでは ? と一瞬考えましたが、しばらくして、その姿勢のまま、口からスーッスーッと安らかな寝息が聞こえてきました。

彼は、対ミーティング用奥義「半ぬぎくつした」なども編み出したユニークな人物でした。
★激闘7番勝負
思い起こせば、ここ数年、たくさんの戦いがありました。
たくさんの強敵もいました ( 強敵と書いて"とも"と読む )。
適当にセレクトして紹介しましょう ( 適当と書いて"いいかげん"と読む )。
第1戦 俺vs幻世喜譚
新人のころ、プログラムの手伝いで参加。発売を散々延期したうえ、結局作り直すことになりました。
2回目も途中から、手伝いで参加。なんとかエイプリルフールに冗談のように発売されました。

評 : 関わった期間の長さを考えると、俺の負け。
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第2戦 俺vs白龍鳳霞
これも新人のころ、会社でスーファミのス○リ○トファイ○ー2ターボの対戦を、同期のプログラマー(後に「ぷよSUN」や「わくぷよ」を作った方です)と延々3時間以上 ( 100戦以上 ) ぶっとおしで遊んで、騒いで、叱られました。
霞様は、当時「GG魔導物語I」のディレクター兼企画で、マスターアップ寸前の大変な状況。
そりゃ叱られて当然だ。
それにしても、ろくでもない新人たちですね。

評 : 叱られて、俺の負け。
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第3戦 俺vsGGアレスタ2
プロジェクトの土壇場、バグ出しのテストプレイで参加しました。
なんと発売後、"報奨金"がもらえることになりました。まだ新人だったので、とても嬉しかったものです。
当時は、今のような味気ない銀行振込ではなく、じかに現金の入った封筒を社長から手渡しで受け取るようになっていたので、その喜びもひとしおです。
社長室に呼ばれたのは、ディレクターの谷田さんを含めても確か5人程度。その中に新人のくせに自分も入っていたわけです。

ひとりづつ、報奨金袋が手渡されました。
企画兼グラフィックの小玉大合体さんや、プログラマーのTAKINさんは、たいそう重量感のある封筒を受け取っているように見えました。それを見て ( さすが報奨金、すげぇぜ ) とか心の中で俺はつぶやきました。

ついに、自分の番になりました。
ドキドキしながら受け取った袋は・・・なんかチャラチャラいい音を鳴らしてました。
中身を見ると、小銭と支給438円と記載された明細が。
横で社長が、
「キミ、本当に仕事したのぉ?」

評 : 半日やったかどうかすら怪しいので、なくて当然。期待したので俺の負け。
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第4戦 俺vs風邪
会社に入る前は、真冬もTシャツ一枚で過ごしており、もし風邪を引いてもすぐに治っていました。
ところが、業界人特有の不健康な生活と、風邪を引いたまま連日会社に出ていたのがたたって、体を壊しました。
その後、一度風邪が悪化すると1〜2ヶ月風邪が治らないような体になってしまいました。
みなさんも健康には充分注意しましょう。失ってわかるものっていろいろありますね。

評 : 健康管理は基本。俺の負け。
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第5戦 俺vsゲームセンターの社長
自分のような割とマニアックな人間は、ゲームごとの1回あたりのプレイ時間を計算して、ゲームセンター ( 以下ゲーセン ) の閉店間際まで、遊んだりします。
例えば、「このゲームはクリアまで、1周10分、2周ENDで20分だから、23:40にコインを投入すると効率良く閉店24:00まで遊べるな」とか。
さらに、何時何分までコイン投入を認めるか、という店ごとの特徴もあるので、それを把握した上で実行しなければなりません。
店員が違うときは、対応が変わるときもあります。 計算すべき要素はいくつかあるわけです。 ・・・普通の人から見たら、こういうことを考えること自体アホですが。 ( 注 : マニアックな人が必ず、こういう迷惑なことをするわけではありません。念のため。)

さて、お店によっては、客がいない場合、早めに切り上げて店じまいをするところもあります。
そんな店では、こういう1人だけ閉店間際まで計算してギリギリプレイを継続している客ってのは嫌なもんです。 店番は、ずっと待ってなきゃいけませんからね。

当時、ダ○イ○ス外伝の全ゾーン攻略を、いちはやく達成することをもくろんでいた自分は、いつものようにいつもの店で、23:30を過ぎてゲームスタート。

ところが、ついに、いつも見守るだけだったゲーセンの社長が反撃に出ました。
なんと、俺のプレイ中に、店の入り口のシャッターを90%くらい降ろしてどこかへ立ち去ってしまったのです。
仕方ないので、地面にはいつくばって、なんとか店の外に脱出しました。誰か見てたら結構怪しい光景だったでしょう。

評 : 脱出できたので俺の勝ちにしたいが、屈辱を味合わされたので引き分け。
.
第6戦 俺vsテストプレイマニュアル
社内のテストプレイに関するノウハウをマニュアル化してくれ、という北野盤監の指令が下り、一時的にテストプレイマニュアル作成チーム「TEST PLAN」が結成されました。
自分以外のメンバーは、
......プランナー代表 オカリナ惣一郎
......デザイナー代表 沢渡寿三郎
......プログラマ代表 カクテル宮崎
という豪華な顔ぶれでした。

割と順調に仕事はすすみ、結果「テストプレイ達人王」というものが生まれました。
完成の日、沢渡くんが
......「ようやく俺達の同人誌が出来たな。」
おいおい、同人誌じゃないって。
チーム名と、マニュアル名の元ネタがわかる人はちょっとだけマニアック。

評 : スケジュールどおりに終わったので俺の快勝。
.
第7戦 俺vs赤ナ○ルル
俺の負け。完敗。今のところ勝ち目なし。

評 : とにかく負け。
.
番外編 俺vs私立探偵 早川健
彼は、何をやっても日本で一番の男なので、俺では勝てません。

評 : 早川は日本一なので俺が負けても仕方ない ( ネタわかる人いるかなぁ? )。
★最後に
最後まで読んで下さった方、どうもありがとう。
コンパイルでは、これまでの定番シリーズはもちろん、それ以外にも、様々な企画が研究されています。
それらが、きちんと形になって、皆さんの前に現れるのを楽しみに待っていて下さい。




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